ちーさんのイイネあつめ

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【創作】わんこ旦那と小正月

再びの参加です。
今回のテーマは、「クリスマス・年末年始」

タイミング悪く体調崩してダウンしてたので、突貫で仕上げました。
小豆粥のステマです(笑)

【第3回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 

ここから小説本文---------------------------

 

「わんこ旦那と小正月

 

 「たっだいまぁ!」
「おっかえりー!」
 買い物袋片手に勢い良く玄関扉を開くと、満面の笑みの裕介が姿を現した。
 顔には、お腹が空きました、とご丁寧に書いてある。
 共働きなのだから、もう少し料理もできるようになって欲しいのに、私のご飯がおいしすぎるから、とごねてちとも覚えてくれない。まぁ、その分、洗濯とか掃除は率先してやってくれるからいいのだけれど。
 新年明けた、というわけで、漏れ無く年度末の忙しい時期に突入した我が社は、誰もが目の回るような忙しさだ。ゆっくりディナー作りとも行かず、仕事始めからこっち、おせちの残りか、餅か、出来合いの惣菜でサイクルが回っている。
「今晩のおかずはー?」
 ご飯をねだる子犬のように、裕介がせわしなく顔をキョロキョロさせる。
 これを可愛いと許してしまうのは、惚れた弱みなのかしら、と心の中で苦笑してしまう。
「今日は、これよこれー、これしかないっしょ」
 いそいそとエプロンをつけながら、買い物袋から今日のメインディッシュを取り出す。
 冷蔵庫の中身が揃っているのに──だいたい買い物は週末にまとめ買いしている──わざわざスーパーに寄ったから、今日はいつもよりも時間が遅い。手際よくやらないと、寝るのが遅くなっちゃう。
「……晩御飯に和菓子食べるの……?」
「はい?」
 調理台の上に、置かれたメインディッシュという名の缶詰。それを見て、裕介が恐る恐る声を上げる。
 何を言ってるんだ、それはご飯じゃない。
「今日、1月15日でしょー? 食べない、小豆粥?」
「あずきがゆ?」
 時間短縮で買ってきたレトルトパックの白粥を土鍋に移しながら尋ねれば、口にするのすら初めてみたいな顔をされた。まじですか。
 結婚してからこのかた、裕介のうちはこういう行事ごとをあまりちゃんとやる家じゃなかったらしく、年中行事の日のたびに、さも当然の顔をして今日はこれ食べる日!と言えば、首をかしげられて来たけれど、小豆粥もアウトだったか。七草粥は知ってたから油断してた。
 確かに、七草粥よりは知名度低いけど、水無月とか半夏生よりは知名度あるとおもうんだけどなぁ、お正月行事だし。ていうか、そもそも、1月7日過ぎたら、全国的にはもうお正月じゃないんだっけ? もう、こういうのってホント習慣だからよくわからん。
「……あずきがゆって、甘くないの?」
 そこがそんなに気になりますか。
 顔を引きつらせながら、これを聞かずにはいられない、と意を決した表情で聞いてきた裕介に、ちょっと笑ってしまう。真剣なところを実際笑うと悪いから、心の中にとどめたけれど。
「甘くない、甘くない。あれよ、あれ。赤飯のお粥バージョンが近い感じ」
 そう言いながら、ぐらぐら言い始めた白粥に小豆の水煮を放り込む。
 それから、お餅レンチン出来るグッズに餅を詰めて電子レンジスタート!
 そろそろ調理が佳境に入ってきて、あまり裕介に構っていられない。
 ダイニングテーブルに、残り物のおかずやら常備菜を並べていく。
 諦めたのか、とりあえず、甘くないことがわかって安心したのか──スイーツ男子だが、酢豚のパイナップルとかのご飯が甘い系は苦手なのだ──裕介は黙っていつもの席に腰を下ろしている。
 チン、とレンジが小気味良い音を立てれば、お餅は準備オッケー。
 土鍋も中も温まればいいものばかりだから、もう大丈夫でしょ。
 お茶碗にまずお餅。それから、土鍋からお粥を注いで、完成っと。
「はい、完成」
「うわーい、ご飯!」
「子供じゃないんだから、お箸両手に持ってバンザイとかしないで!」
「ちぇー」
 ほんと、裕介は、ご飯のこととなると急におこちゃま化するんだから。
 ささっと、エプロンを外して席に付けば、ようやく田中家の夕食の始まりである。
「「いただきます」」
 どちらが合図せずとも、いつも同じタイミングになる食卓の挨拶。
 それから、待ちに待ったご飯を口へ。
 とろりとした粥を口に運べば、なんとも言えない懐かしさが胸によぎる。
 薄い塩味は今はおいしいけれど、子供の頃は全然味がしなくて、後から塩を振りまくっていた気がする。
 実は、年中行事を毎回ちゃんとやるのも、この1年が久しぶりのことである。
 就職してから一人暮らしを始めて、忙しさと一人の気楽さに負けて、ついついサボっていた。
 それが、去年の春に結婚して、よし、旦那様のためにも年中行事を簡単でもいいからサボらないようにしないと、と決意したわけ。
 まぁ、裕介は全然気にしてないどころか、存在すら知らなかった行事ごとも多々みたいだけれど。
「ねぇ、どう? 初めての小豆粥は?」
「うーん、柔らかい赤飯with餅って感じ? でも、これはこれでおいしいねー」
 ニパッと笑ってもぐもぐ。それから、いそいそと土鍋へお代わり。
 具体的な賛辞なんか必要なくて、これだけで作った甲斐があるというもの。まぁ、今回はだいぶ手抜きしちゃったけどね。
 願わくは、来年はその日の朝から催促される、そんな行事になりますように。

 

(終)

 

皆さまもどうぞ、1月15日の小正月には小豆粥をどうぞ。

作中で餅焼いてたのは、こんなんのイメージです。

シリコン製 餅焼きトレー 2個入OWN COLOR オウンカラー オレンジ

シリコン製 餅焼きトレー 2個入OWN COLOR オウンカラー オレンジ

 

 

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